安全保障関連法に反対する学者の会で考えたこと 姉崎洋一さん(北海道大学名誉教授) | インタビュー・サイト ユーフォニアム

安保法制に反対する学者の会で考えたこと 姉崎洋一さん(北海道大学名誉教授)

はじまりの予感

● これがはじまりだ、という感じでしょうか。

 

姉崎 うん。だからこれで侮ってね。ほら、連休が明けたらみんな忘れるだろうということを言ってたじゃないですか。そこを通れば国民は醒めて忘れるだろうみたいなことを今の政権は思ってるかもしれませんけど、それはないだろうと。むしろいろんな意味ではじまり?新しい、この日本における民主主義。そういう意味では世界も注目をしていて、日本のサイレント・ジャパニーズと思っていた人たちが、声を出すようになったとか、個人がいろんなことを言うようになったとか、これだけのデモを組織しているとか。そういうのはみんないまは新しい動きだということを外国が認識し始めている。

 

● むしろ外側の目線のほうが大きいような気がする。

 

姉崎 だからいま一番心配しているのは、送り出されると思っている自衛隊員。北海道の弁護士事務所がこの間相談所を開設したんですよ。そうしたらわずか2日間の間に35人相談があって、中には親だとか、本人自身もあったりするんですけど、「どうなるんだろう」と。いま、自衛隊は僕の知っている弁護士から聞くと、現職の自衛隊は全員「遺書」を書かされている。

 

● 本当ですか?

 

姉崎 だからいつ派遣されてもいいように。そのように親たちに渡せるような、そういうようなものを今強いられ始めているというようなこと。

 

● なるほど。こうなってくるといわゆる恩給とか、それこそ靖国に祀らなくていいのかとか、これは今までありえなかったような、国のために死んだ人間をどうするんだ?みたいな非常事態な話になってきて。厄介な、ここでまた大きな問題として運動が起きてくるかもしれませんね。ある種、パンドラの箱をあけてしまうような。

 

姉崎 かつ、いま自衛隊のままだと正式に憲法改正しないと、今度の法律って外国に出すと自衛隊員は向こうで逮捕されると向こうの法律で処罰されるんですよ。

 

● へえ~。

 

姉崎 捕虜の適用にならない。軍隊じゃないから。

 

● そうか。位置づけ的にはどうなるんですか?

 

姉崎 *「ジュネーヴ条約」の対象外になる。正式アーミーじゃないから。デフェンスとしての自衛隊でしょ?だから憲法上軍隊じゃないことをいまだにどんなことを言おうと、言っているわけで、自衛隊法を改悪しても、あくまで自衛隊ですから。だから一番困って不安を持っているのは自衛隊そのものだと思いますね。で、このままいくとアフリカの南スーダンに最初に派遣される、PKOでね。で、そのうちアフガンが次の対象になってくる。

 ドイツが同じように*コール首相のとき。あそこは日本と違い軍隊なんですよね。けれども、日本と同じように海外に送らない法律だった。それをコール首相のときに変えちゃったんですよ。それでアフガンに送ったんですよね。そうしたらそんなことを知らされてなかったドイツ軍の人たが向こうに言って後方支援。そこでやはり撃たれて死んで、50何人か犠牲者となって。そんなことは聞いてなかったという親たちなどが一様に反発するという事態。それが多分近未来に日本が確実にそういうことが起きる可能性が出てくるので、その時の想定事態がないんですよ。自衛隊を守る仕組みを持っていないので、外国に送り出すというのは、これほどひどいことはない。しかも指揮命令権は日本から離れたアメリカに移りますから、アメリカに渡すという、これは捨て石ですよ。

 

● こういう意見を聞いたことがあるんです。つまり要するに憲法学者が憲法違反だといっている。日本は憲法裁判所がないですけど、元最高裁の裁判長も違憲だと言っている。法制局の今までの長官たちもみんな違憲だと言っている。つまりどう考えたって司法試験に受かった人たちは憲法を。まあ政治家は別ですよ?でも法の専門家として、いわゆる憲法の原則を逸脱されては自分の職業の根幹に関わってくるので、どう誤魔化しても違憲だといわざるを得ない。それを誤魔化しごまかしなんとかかんとかギリギリここまでは許容という形で今までやってきたけれど、今回の逸脱は流石にひどすぎると。若手の木村草太さんもこれは逸脱が過ぎて無理だと言ってるし、若い人たちはそこを勉強して反対の声をあげている。学者さんや文化人も反対している。

 で、アメリカという国は何だかんだいって、ジョージ・ブッシュのときとかはメチャクチャでしたけど、基本的にはデモクラシーのお国柄ではないですか?

 

「国家」と「民主主義」のダブルスタンダード

姉崎 うん。まあ、米国は複雑ですよね。国家予算の半分は軍事予算ですからね。だからあれはもう構造的に軍隊を小さく出来ないんですよ。ある程度は削減するんですけど。オバマといえども、それだけ構造的に軍事的なアメリカの構造の本体をいじるのは物凄い抵抗を受けるでしょうし、彼としてはそこは触れない領域になっている。だからせめて彼なりの良心で言うと、アメリカ兵の犠牲を減らすために無人機を使うということ。で、相手国が何人死のうが関係ないという。そこがオバマの限界じゃないかという風に思います。だから彼がやれることははっきりしてますので、次大統領が誰になるかだけど、共和党になるとより酷いですけど、民主党から出てきても同じ枠組みになる。あの国は二大政党でしか動いていないので。だからアメリカの民主主義も下まで降りると草の根デモクラシーがあったり、憲法裁判所も最終的には理性みたいなものがあるし、アメリカも一応、軍隊的な合理主義が働く国なんだろうと思うんですけど、ただ他国に対しては人権を適用しないので、沖縄を見ててもそうですが、多分日本人に対してアメリカ人と同じような人間としてみてないだろう。だから友邦国と勝手にいまの首相は思い込んでいるけど、アメリカは日本を信頼してないですよ。イギリスにはある程度開いている情報は絶対に日本には示さないですね。だから基本的には第二次世界大戦で敵対した国だし、人種的にも違い、ひょっとすると軍国主義が芽生えてくるかもしれないという警戒もある。だから飼い犬のまま、それ以上のことはさせないという、その上で日本を扱っていますからね。つまり、民主主義の敵はやっぱりダブルバインド、ダブルスタンダードだということになりましょう。国内的には民主主義的なもので自分を縛る。だから人権を適用すると。しかし国外的には違う原理で、外国人だと。かつての敵対国だと。こういうのはオバマの考え方にもあると思いますよ。

 

● そうですよね。だからアフガニスタンに対する対処とか、イラクに対する対応で現実に出てるんですけれども。ただ、さっきの話の続きをいいますと、つまり国内の憲法を守らない日本人が国際法を守るのか?という不信がアメリカにありませんか。

 

姉崎 アメリカが国際法を守ってませんからね。

 

● ははは(笑)。確かに守ってないけど(笑)。

 

姉崎 二百何十年間、戦争し続けている国は唯一アメリカですよ。だからそこはダブルスタンダードがある。我々はやはりアメリカに幻想を持ちすぎている部分があって。

 

● 幻想ですか。まあ確かにそのようなものはあると思っています。

 

姉崎 だから中にあって民主主義的な思考で動いている人はやはり「したたか」だし、学ぶことが沢山あると思うし、アメリカは死んではいないと僕も思うけど、いまの現体制を支えているものはやはり共和党だろうと民主党だろうとやっぱりある種の構造的なものが働いている。

 

● ダブルスタンダードで。

 

姉崎 はい。

 

● ああ、そうか。じゃあ、どんなに日本が非民主的であっても、使えるものは使う、と。

 

したたかな国際社会

姉崎 ええ。かつ、彼らはしたたかなので、そのしたたかさを逆に言うと日本は学んで欲しいと僕などは思います。保守的政治家だったらもう少ししたたかにやって欲しいと思うんだけど、アメリカは例えば中国に対しても絶対に今の国力を見ても貿易の相手国としてみても、彼らを刺激するのは絶対にまずいと思っているんですよ。まともに彼らと戦争するなんてちっとも思ってないわけです。しかし日本があれだけ中国を刺激してもアメリカは今までは「ダメだ」と言っていたのを、いまは「いい」と言ってるんですよね。

 

● いいと言っている?

 

姉崎 うん。あれだけ韓嫌、嫌中というものに乗っかってやっていることを前は釘を指して「やるな」と言ってたけれど、今あまり言わなくなったですよ。何故ならアメリカの軍事戦略に最も忠実で一貫しているのは安倍だと。この安倍以外の代わりになる人はいないので。多少は言わせておけ、と。最後の所は俺たちがたずなを握っているから、というところがあるので。だからいま言いたい放題安倍は言っているけど、アメリカとしては中国とやろうなんて思っていない。むしろ北朝鮮はいつでも潰せるけれど、それをやると彼らはまた何をやるかわからないので、そこはまた世界の関係でもうちょっと見よう。核爆弾を落とすかもしれないから。

 

● 核を使われると大変ですからね。

 

姉崎 ええ。だからそこは少しチェックしなきゃいけないと思っているけれど、基本的にアメリカの政策はともかく軍事的負担を全部肩代わりして人まで出させようということですから、この美味しい話を例え嫌いな安倍であってもやらせようという。そのことは安倍は知っているので、もう言いたい放題のことをいまやっている。

 

● はあ。知っているんですか。

 

姉崎 ええ。

 

● はあ~。なるほど。これ、実は最後にお聞きしようと思ったことなんですけど。実はいまのお話を聞くと勘違いだったのかな、と思うんです。つまり中東とかイスラム勢力へのコマとしては日本はいよいよドンパチにも参加しますよということだけど、櫻井よしこさんという方がいますね。下で両親がテレビをかけていると音が筒抜けなんですが、あの人もね。認めちゃってるんですよ。視聴者の人からのメールかなにかで、憲法の解釈がこれだけ批判されている。確かに憲法を考えると整合性はありませんと櫻井さん、認めちゃってるんですよね。だけど、中国の台頭を考えると軍事的な備えとして安保法令は必要だ、というわけですよ。だからホルムズ海峡とか、いろいろ言っていたじゃないですか?でも櫻井さんに言わせるとおそらく僕は安倍さんの代理のような感じだと思ったんですけど、実際は中国に対する備えなんだと。仮想敵とまでは言ってませんでしたけど、中国の台頭を考えると非常に怖いと。だから備えとして必要なんだと。だから僕はアメリカの要請は中東だと思ってますけど、その見返りとして使える軍事は中国にも使うよ、というメッセージかなと。

 

姉崎 でも、財界全体から見ると中国への権益、みんなほかの国に抜かれていってて、日本の政策がこういうことをとる限りはね。ですから、前の中国大使だった人が言ってますけど、「小児病的な政治的挑発はやめてほしい」と。財界から見てもっとも美味しいのをみんなとられてしまうと。だから中国とケンカしてなにもいいことはない。北大の北京事務所の所長もしていた鈴木さんという中国研究をやっている人ですが、今の安倍さんの軍事大国化を一番喜んでいるのは中国共産党だと。つまり中国も内部にいっぱい矛盾を抱えている。それをまとめるのは日本を悪としてそのために軍事的になるということ。その一番いい材料を安倍首相は送っていて、中国の民主主義を抑圧化している。じゃあ中国はそれだけ軍事を大きくして戦争やる気かといったらその気はない。大きくはするけれど、本格的にいまの時代に戦争やろうなんて思っていない。ということで日本がひとり勇ましいことをいって、民衆に対しては中国脅威論を与えているけれど、リアリズムに立つとありえないことをいまやっている。で、非常に日本の財界は露骨だなと思ったのはこの前イランがホルムズ海峡の理屈が変わったのもイランが変わったからなんですけれども、アメリカと手を結んだ。そうしたらこの前NHKでやってましたけど、イランに対する貿易の説明会をやったら、日本の企業のほとんどが参入してて部屋が満杯になっていた(笑)。

 

● (笑)商売として。

 

姉崎 企業がうわ~と押し寄せる。いかにもそんな、ポリシーとか、政策関係ではなく、儲かればいい。財界ってそういうところで動くじゃないですか?すると中国との関係で言うと一番損してる。だから中国に進出している日本の企業が一番憂いてるんじゃないかな?せめぎあいの中で最前線のセールスマンなどが車を売ってるわけだから「やめて欲しい」というのはやっぱり意向としてあると思いますけど。

 

*ジュネーブ条約 戦時における傷病者と捕虜に関する国際条約。1864年にジュネーブで結ばれた、戦地での傷病兵の救護と救護者の中立性保護のための条約に始まる。現在の条約は1949年に締結された。

*2コール首相 ドイツ連邦共和国の第6代首相。キリスト教民主同盟CDU)党首。1982年社会民主党SPD)のシュミット政権崩壊後、自由民主党FDP)と連立の連邦首相に就任、翌1983年の総選挙で保守中道政治を掲げて圧勝、政権の座を固めた。1989年秋、東欧諸国の共産政権の崩壊、続くベルリンの壁崩壊東ドイツでの統一支持勢力の台頭をみてコール首相は慎重派を押しのけ、1990年10月国民悲願のドイツ統一を実現させた。統一直後の総選挙でも第一党の地位(議席数319)を確保、第二党のSPD(同239)に圧勝。引き続き政権を担当し、1992年のEU(ヨーロッパ連合)条約の成立とそれに基づくEU共通通貨(ユーロ)の誕生にリーダーシップを発揮した。

(日本大百科事典より)

 

 

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管理人:杉本 賢治

編書『ひきこもりを語る』(V2ソリューション)

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