生活困窮者自立支援法について 櫛部武俊さん(一般社団法人 釧路社会的企業創造協議会 副代表) | インタビュー・サイト ユーフォニアム

生活困窮者自立支援法について 櫛部武俊さん(一般社団法人 釧路社会的企業創造協議会 副代表)

■ なるほど。相談の話が出ましたが、片一方でこの魚網作りの仕事というのは先ほど仰られたように新しいソーシャルアクションということなんだと思うんですけど、もう一方の相談支援に関して言うと、結構個人としてのいろんな力が弱っている人の相談を受けることになると思うんですけれども、こちらのほうはどうでしょうか?

 

櫛部 それは人によりけりですね。人がどのようなニーズを持っていらっしゃるか。たまにハローワークの前で相談センターのチラシを配ったりします、まあ、何百枚か撒いたうちの一人二人がね。ここに相談に来るという形。だから多分、僕らがやる相談というのは、一般就労に行ける人ではないんですよ。おそらくさまざまなことがあって、長期に仕事に就いてなかったとか、家にちょっとした問題があるとか、それらを含めて就労困難な人を相手にしている。ということは、生活支援というか、生活問題を切り離してはなかなか考えられない人が中心的に多いだろうなと思います。だからウチの事例でもここに相談に来られて、ゴミ袋の検品、というか袋詰めですね。そういう作業をして、一定のお金をちょっと稼げるようになって、それから普通の会社に勤められた方もいます。やっぱり「定着支援」とか必ずあるわけです。  

 だからそういう人たちを相手にしていって、人によって「そこまではいいわ」という人もいれば、様ざまです。ですから、こちらから何か基準を持ってどうとかということはないですよね。ただ、仕組みとしては支援計画を作ってそして一定の目標が終わったら一端支援の終了という仕組みになってるんで、一応そういう形にはしています。ただ僕らとしては結構気になるわけで、それはちゃんと何らかの形でケアはしようとは思うけど、かといって、何かもう一端仕事に疲れてるのにこっちが心配だからと言ってあんまり電話しすぎるとちょっとまずいところがあって、微妙なんですよね。だからそこら辺は相談員の皆さんは気をつけながらやっていますし、あるいは絶対もうこの人は生活保護だ、と。もう基準を遥かに割れた年金しかないと。なのに絶対、保護は受けたくないと。首に縄つけて保護ともならないし。僕らは申請を絶対止めてませんから、なるべくなら基準割ってる人はやっぱり保護を一時的に利用していただかないといけないのは分かってるんですよ。僕らももう何件もつないでいます。ただ、それでも餓死寸前になっても受けない、という人が生まれていることも事実なので。これだけの世の中のバッシングの中ではね。そこはなるべく連絡を絶やさないようにし、例えば物資ですね。お米とか、フードバンクですね。そういうものを何とかしたり、その点では社会福祉協議会さんの年末の共同募金のお金を先にいただいて、灯油とかお米とかさまざまな缶詰とかを持って年越し用にハイリスクな人のところには行くとかね。そういうことはやっぱりやらなくてはいけない。人によりけりですね。だって、年金3万だとかね。

 

■ 釧路で月3万で(笑)。

 

櫛部 いくら持ち家でも3万ではね。とりわけこの厳寒期にはね。

 

■ そうですよねえ。

 

櫛部 こういう時には何とかしなきゃ、というのはあります。僕たちはけして保護に近づけないわけじゃないんだけど、「どうしてもいやだ」という人はいらっしゃって。

 

■ ああ~。そうなのですか。

 

櫛部 はい。それは何件もある。あるいは車の保有を巡って喧嘩して「そんなことだったらもういい」と言った方もいます。まあいろいろありますよね。だから必要に応じてその状況で出来ることは支えなくてはいけないことはやっている。それからある程度その人にとってもういいかな、という人に何かこっちから「その後どうですか?」とか、やたらにやらないようにはしている。だから逆に言えばまた何か困ったら来て欲しいですから。しつこくて嫌だなという風に思われたくないなという所はありますね。

 

■ 相談に来られる人の世代ですとか、相談内容ですとか、どういう感じでしょうか?

 

櫛部 世代はそんな若年者とか、10代というのはまずないですね。親が心配してくるのは多少ありますが、やっぱり30代後半から40代。あるいは60過ぎて低額年金で、と。もう仕事がなくなってとか。やっぱりそういう所が多いんじゃないでしょうかね。

 

■ そうですね。いただいた資料を拝見するとやはり65歳以上の方、多いですね。全体で半分近くおります。

 

櫛部 で、結局やはり生活保護につなぐんですよ。やはりこちらの相談支援の場所というのは敷居が低いんですよ。みなさん、やっぱり役所に行くということはそれだけで敷居が高いということは良く分かりました。

 

■ なるほど。

 

櫛部 ええ。で、市役所で「駄目だ」と言われたら絶望するからここで話を聞いて少し汗をかいたり涙を流したりして。覚悟を決めて一緒に行ってもらって、みたいな。

 

■ 覚悟ですか。

 

櫛部 覚悟なんですよ。それでね。いまの生活保護はやっぱりかなり心理的なハードルをあげてますよ。釧路でも例外じゃない。

 

■ 釧路でもそうなっていると。

 

櫛部 なっているんです。申請用紙とかいろんなものが随分変わって、心理的なものが高くなっていると思います。だから僕らの目標は「入りやすく出やすい」生活保護と、生活困窮者自立支援法が一体になって、人と地域を耕していく、ということなんだけど、生活保護のところがちょっと全国的に怪しくなっている。

 

ケンタウルス

 

■ そうですか。それは国の意向がそうなっているということですか?

 

櫛部 う~ん。だから僕は審議会で言ったのは、「ケンタウルス」と言ったんです。

 

■ ああ~。

 

櫛部 上は人間だけど、つまり困窮者支援の発想は人の尊厳を言ってるけど、下半身は暴れ馬のような生活保護というわけです。そういうものが絡みあっているんですよ。「一体改革」ですからね。そういうとき、どうも辻褄が合わないですよね。で、今回の困窮者支援が生活保護分野とどういう接合を持つかというのは本当のところは詰め切れていない課題なんです。求職者支援法」という制度もそうです。そこはまだ懸案のままで、つながっていないんですよ。つながっているようでいて、実はそうではない。そういう問題もあります。それから保護のほうは給付の水準も下がって。何というのでしょうね?相変わらずのスティグマ構造が強められたという印象はすごくあって、かつ、いまのこの世の中の雰囲気があるでしょう?

 

■ そう、ありますね。

 

櫛部 ええ。そういう流れがいま全体にヘイトスピーチも含めて自己責任論だとか、排除論ですね。その状況の中で生活保護及び生活保護を担当しているワーカーの気分の中に「生活保護イコール不正受給」というのが頭にこびりついている状況がある。あるいは福祉を学んでいる学生もそうなんですよ。それは釧路といえどもあるのではないかと私は思っている。で、それをそのままにしたままで、「困窮者支援ってどうなるんですか?」という話なんですよ。

 

■ いや~、僕はね。最初言ったように、人と社会の何というか、再生のようなものとして受けとめたかったんですが(笑)。まあ同時に前から話はありましたよね。あの~、新しい「水際作戦」になるんじゃないか。先ほど言われたとおりの70%の側にいらっしゃる人たちの議論ですけれども。

 

櫛部 だから発想のつなぎ方がね。あまり見えてない。「保護は保護だけです」みたいな感じになっていると思いますよ。そこを何とかこちらでは「庁内連絡会議」とかいろいろやってもらいながら、どれだけ役場と民間が65%の範囲で。ね?70%にならないように、僕らもね。65%の中でちゃんとやりとりをし、お互いに謙虚に学んで、改善することは改善しようという風になれるかということですよ。そこがすごく大事なことですね。そうしないと結局「委託・受託」になる。すると委託が強くて受託が弱いみたいなことになってくると、誤解を怖れずにいえば、指定管理と同じですね。

 

■ うん、確かにそうでしょうね。

 

櫛部 で、何か「困窮者支援」イコール「ゴミ屋敷片付け」みたいなね。そういうイメージの捉え方も生きている。一方ではそこの官民協働のポイントというのはその「接合」のはずなんですが、つまり生活保護のほうも柔軟なことをちゃんと引き続きやっていかなければならないし、で、「入りやすくて出やすい」そういう生活保護に変えなきゃいけないんだけど、いまは「入りにくく」、でも「出ろ」みたいな構造になっているので、ここの所の両方をね。ちゃんとしないと。そして、出る時にこの困窮者支援が上手く使えるようにね。あるいは整合のところを工夫し、開発し、議論して作っていかなければいけませんね。

 

■ なかなか大変なことだと・・・。

 

櫛部 うん。大変だと思います。だけど僕はね。まあ面白いというか、自治体次第だなあ、って思ってます。あんまり考えていないところはそれなりで、考えてるところは必死にやると。市役所もそれなりに理解を示していただいたもので、やっぱりこちら側に玉は投げられたなって思う部分もありで、頑張らなきゃいけないな、とは思っていますね。

 

■ まあ、こういう言い方するといかがなものかというのもありつつなんですが、やはり櫛部さんがいらっしゃるからという部分は?

 

櫛部 いやあ(笑)。どうなんだろう。

 

■ ありませんかね?信頼は既に出来上がっているでしょうから。市役所との間でも。

 

櫛部 ああいう事業を経た中での今なので。行政って面白いなあって思いますよ。必ずしも順風満帆がいい訳でもないんですよ。「瓢箪からコマ」が生きてみたり、そんなものなんですよ。あまり立派な考え方で行ったからって上手く行くものでもなくって。意外に何かの空白があったり、お互い言い淀んで困っちゃったなと思ったときに、何かが入ってきちゃったりとか。まあまあ、面白いものなんだな、って改めて思いますね。だから不埒かもしれませんが、くそ真面目に考えないで、さっき言ったようにバランスですよね。いろんな人にいい顔しながら、頭を下げながら(笑)。でも「一緒にやろうぜ」、みたいなことがちょっと出来るように。時々はチクチク言って。役所には「なるほど」って気になって考えてもらわなくてはいけないわけですから。そういうことはやっぱりやって行きたいな、と思ってますね。でも、問題はあれですよ。一代限りの横綱みたいなもので、大鵬死んだら、大鵬部屋がなくなるのと同じで、それはやめたいですよね。

 

■ そうですよね。個別の人の力量しだいというのはちょっと。

 

櫛部 それは駄目ですよ。だから、今後この職場もいま若い職員や、いろんな人たちがいるわけで。その人たちがいずれ絶対にこれを担っていくわけです。だけど私自身のキャリアがちょっと長いゆえの経験もあり、それはやっぱりいまここでDNA作らなきゃな、と思っている。その3年間でもあり、5年間でもあるんですよ。

 

■ うん、うん、うん。

 

職場文化

 

櫛部 つまり職場文化ですよ。「どっちを向いてるの?」。何を喜びとして、何を怒りとしたり、何を楽しいと思うのか。やっぱり人は違うんだ。つまり相談者も違うけど、職員だって違うわけで。「相対性」ですよね。そこをどこまで深く掴むのか。我々は絶対的になりがちなんですよ。絶対的な真理なんてものはないのに。

 

■ うん、そうですね。

 

櫛部 思いこむとそうなるんですよ。でも相対的ということは「ああ、これもあるけど、そうだよな」ということですね。そんな職場文化をどれだけいろいろな人たちの中において作っていくか。これが僕は決め手だと思っている。それは一朝一夕には作れない。歴史がある。それが人変わりしながら、でもちゃんと受け継がれていくことがすごく大事なのであって、何か「目覚しい療法」ではないんですよ。僕はそれは思いますね。

 

■ ちょっと個別に思ったことを話させてもらうと、まさに「職場文化」みたいなものについてですが、人が働くというのはお金も必要、生活のためにはお金も必要なんだと思うんですけれど、やはり自分がそこで出会った先輩とか、尊敬できる先輩とかとの出会いの中で自分自身が成長できるというか、そういう出会いというのはとても大事なんだろうなって思いつつ、まあ手に入れられないままこの歳まで来てしまったんですけれども、実際、大事なんだと思うんですよ。定着している職場というのは非常に大事で、そこで人として育てられることが働くことの要素だと思うんです。

 

櫛部 ああ、その通りです。多分、そうです。だから多分この困窮者支援も「人をどれだけ育てるか」なんですよ。担う人に関してね。来られた人を一生懸命分かって、支えようという人を増やすし、それからいろいろと困難というものにブチ当たって「どうしようかな、死んでしまおうかな」と思っているような人たちを同じ人間としてちゃんと支えられるかどうかということですよ。だからなんでしょう?人材育成と言ってしまうと何か薄っぺらく響くけど、でも多分そこがポイントです。

 

■ はい。

 

櫛部 それは仕事上、管理職は必ずいるけど、それは管理技術に行っちゃうと間違っちゃうんですよ。やっぱり。そこに何かもうひとつ違うものが必要ですね。だから言葉で言っちゃうと何ですが、「センス」というか、「感覚」というか。それが大事です。

 

■ ええ。そうですよねえ。

 

櫛部 まあ「刮目」というか。それをどこに置いているか、ですね。

 

■ だから「センス」の継承、みたいなものなんでしょうね。

 

櫛部 ああ。はい、はい、はい。

 

■ それがあることがとても大事なんでしょうね。

 

櫛部 そう。で、それは何かこう仕組みを考えたりね。「こういう構図です」、というのとはちょっと違って。極めて伝承的で、だから「学ぶ」というか、そういう作業を通してしかね。通っていかない気がしますね。

 

■ 人の顔がちょっと見えてこないと、これ、危ないですよね。

 

櫛部 はい。ただ、こういう仕事をするときは一定程度、「絵」を書いていかないと駄目なんですよ。やはりそれは人さまがどう受け取るかという問題がありますからね。でも、策に溺れないようにしないと。やっぱり「仕組みじゃないよね」と僕は思ってます。だからセンスとか、「あ、あの人のこの言葉」とか、「あの切り口」ということにグッと引き寄せられるといいますか。そういうことはずっと思ってますね。「それはお前、何だ?」と言われてもわからないけど。だから何か「ビビッ!」と来る何ものかですよ(笑)。

 

■ 人情とか、そういうものになるのかなあ?

 

櫛部 ああ~。でも「何が大事と思っているか」というその人のものが多分出てる、ってことですよ。

 

■ 哲学みたいなものかなあ?

 

櫛部 うん。その人の輪郭が出ちゃう。僕は出ると思いますよ。別に真面目な人格とかそういう意味じゃなくて、何が嬉しいとか、大事とか、幸せとか思っているか、という何かそういうものですね。それがすごくね。何か普通にといいますか、自由に出るといいますか、まあなかなか出にくいものだけど、そういうものが職場文化として非常に大事じゃないかなと思っていて。格好いい絵を描いて理屈がこうだからとか、そういうものじゃなくて、心の、何ともいえないものが動く。何かそんなものですね。そういうものがある相談であったり、それがある中間就労はやっぱり僕はお互いに響いていくというか、続いていくと思いますね。だからそれが私に残されたDNA継承の大事ないまの役目であり、さっき言った65%というのは新年度以降の非常に肝になる僕のものですよ。

 

 

求職者支援法」

求職者支援制度とは、雇用保険を受給できない求職者に対し、無料の職業訓練(求職者支援訓練)を実施し、本人収入、世帯収入及び資産要件等、一定の支給要件を満たす場合は、職業訓練の受講を容易にするための給付金を支給するとともに、ハローワークが中心となってきめ細やかな就職支援を実施し、安定した「就職」を実現するための制度を実施する法律。

次のページ

  3  

管理人:杉本 賢治

編書『ひきこもりを語る』(V2ソリューション)

※8月27日『ひきこもる心のケアー経験者が聞く10のインタビュー』(世界思想社)、好評発売中。

当当サイトの管理人は安保関連法案に反対いたします。

モバイルサイト

ページの先頭へ